リフレクションの力

●先日、リフレクションというのはすごい力があるなと改めて実感する体験をした。個人的なことになるが少し書いてみたい。私は軽い認知症を患う高齢の母と同居しているのだが、その母が先週土曜日にお稽古事(囲碁を習っている)に出かけ、その帰りに外食をしてきた。コロナが危ないからと私たちは電話やラインで止めたのだが、言うことを聞く聞いてくれない。

 

●帰ってから話を聞いてみると、マスクなしで友達とお話ししながら食べたらしい。そこで他の家族と相談して、家庭内感染を避けるため、5日間だけ食事を母とは離れてとり、話す時はマスクをするようにした。しかし母はそれが非常に不満らしく、私が来たらマスクをするのか(避けるのか)、なぜ一緒にご飯をたべれないのか、私をのけ者にするなと私たちに迫る。

 

●母の口調は私には攻撃的で、脅したりすかしたりして感情的に私を揺さぶり動かそうとするもののように感じられた。しかし母の思いを叶えることは、自分を含め家族全体、さらには周りの人が危険にさらされることになる。さらには母にマスクは必要だよ、と言ってもお稽古では誰もしていない、となかなか聞いてくれない。行動変容は、認知症のために非常に難しい。

 

●顔を合わせるたびに責められる感じがして、嫌になり、私は母から逃げ出したくなった。母の感情的な言い方に引っかかってこちらもきつい言い方をしてしまうと、それも後悔のタネになる。ただやはり強い感情は起こってくる。また普通の理屈、それでは外食しなければいいじゃん、が通用しない。さらにマスクもせずに近寄ってくるので、実際に怖い。

 

●それでその夜は、説明し反論したくなるのを我慢し(ああ言えばこう言うという不毛な話になるので)、ほとんど口を聞かず、顔を合わせないで済むように早く寝室に逃げ込んだ。ただ当たり前だがこのように逃げているだけでは、感染リスクを減らすことはできない。家族の誰も守ることができなくなる。それでどうしたらいいのかわからなくなってしまった。

 

●そこで翌朝フレッシュな中で私は、リフレクションに取り組むことにした。そしてこうした母との感情的なやり取りは、私の子供の頃から繰り返し起きていて、私の人間関係に大きな影響を与えたのだと気づいた。私は小さい時からこれが嫌だったんだなと思う。そしてこうして感情を揺さぶり人を動かすことから逃れようと早く家を出たのだ。

 

●このようにいつもは「逃げること」で対処してきたが、今回はそれではうまくいかない。母にも他の人にもリスクが大きくなりすぎる。どうすればいいか考えるために私はまず今ここで大切にしたいことを確かめた。それは母と最後まで、できれば楽しく感染せずに一緒に家で過ごしたい。でも不毛な感情的なやり取りで動かされることは避けたいというものだった。

 

●その上で今できることを考えた。それは私が大切にしたいこと、特に「楽しく、感染せずに一緒に家で過ごしたい」という気持ちを母に言葉で伝えること、そして出来るだけ感染リスクを減らすように協力を求めることだった。そしてできるだけ母に伝わるように、マスクの必要性や無症状の人からも感染するという事実を理解できるニュースを探し動画で見てもらった。

 

●結果は思いがけないもので、すんなりとマスクの必要性を受け入れ、外食はしないでおくと言ってくれた。また食事を離れて取ることも受け入れてくれた。私自身も母を嫌がり避ける気持ちはなくなり、一緒の時間を大切に過ごせるようになった。リフレクションしていなければこうした平和な気持ちになることはなかったと思う。すごいなと感じている。

 

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