『すばらしい新世界』(オルダス・ハクスリー)1

●以前から『すばらしい新世界』を読みたいと思っていた。それは『ホモ・デウス』などを書いたユヴァル・ノア・ハラリが、未来社会を考えるヒントになる本として紹介していたからである。そして実際に読んでみて、私はこの本には「今ここ」とは何かについての大切なポイントが書かれていると感じている。

 

●ハラリは「幸福への鍵を見つけること」が21世紀に人類が取り組むプロジェクトの1つであるとし、薬物による「生化学的な幸福」がこれからの社会で広がっていく可能性があると考えている。そしてこの『すばらしい新世界』はまさにそうした社会が描かれている。

 

●ハクスリーは西暦2540年、いくつかの悲惨な戦争(自由主義的価値観がもたらした)の後に生まれた、安定と秩序・幸福を最大の価値としている社会を描いた。この時代、人間は壜を使って「生産」されていて、壜の中にいる時から成長過程すべてにおいて、社会に適応するように操作・教育されていく。

 

●人間は統治する人、働く人など階級に分けて生産され、その階級で幸福を感じるように徹底的に条件付けされる。またいつも皆と一緒にいること、楽しく気晴らしをすること、フリーセックスなど感覚的な快感を良いこととし、一人でいて感じ考えること、異性を自分だけのものと思うこと等を「悪徳」とする。

 

●それでも落ち込み、嫌な気分になる時は、副作用のない「ソーマ」を数グラム飲むだけで「幸福」な気分になる。衛生管理は完璧で老いも克服され、60歳でポックリと死ぬまで皆、若々しさが保たれている。死も恐れる必要のないものとして条件付けされる。この社会を統括する世界統制官は言う。

 

●「今の社会は安定している。みんなは幸福だ。欲しいものは手に入る。手に入らないものは欲しがらない。みんなは豊かだ。安全だ。病気にもならない。死を怖がらない。激しい感情も知らなければ老いも知らない。強い感情の対象となる妻も、子供も、恋人もいない。しっかり条件付けされているから望ましい行動以外は事実上取れない。何か問題が起きた時はソーマがある。」

 

 

 

 

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